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無人駅のプラットホーム

切符も買わずに無賃乗車

行き先が何処かは知らない


ただ、ここではない何処かに行きたかった


人気のない車内でうとうと

目を覚ませば誰もいなかった

車掌が切符を見に来る様子もない


窓の外は嵐のようだ


時計を確認すれば午前2時

こんな時間に走る汽車はそう多くはないだろう

そして......

プシュー......

こんな時間に駅に止まることもそうそうないだろう


ふと視線を上げれば人の姿

ピシッと張った灰色のスーツに帽子に杖をつくという昭和を匂わせる老人だ

老人は、がら空きの座席の中でわざわざ俺の正面に座った

「お若いの、煙草を持っておらんかね」

―――吸えるのか?

「人もおらん。構わんじゃろう」

煙草を差し出し、受け取った老人はマッチを擦った

嗅ぎなれない火薬の匂いが辺りに漂った

「お若いの、あんたは何処へ行くのかね?」

―――さぁ?終点まで行くのもいいかな

「あまり生き急がんことじゃ」

―――何?

「老人の忠告は受け取っておくもんじゃて」

そう言って、老人は帽子の下の禿げた頭をぺしぺしと叩いた

―――そう言うあんたは何処へ行くんだ?

「さぁのう」

―――この列車は何処まで行くんだ?

「案外、あの世かもしれんぞ?」

―――笑えない冗談だ

「ホッホッホ、そうカッカするな」




老人は黙りこくり、車内に静寂が戻ってきた

老人はうつらうつらと舟を漕いでいる

ならば、俺ももう一眠りすることにしよう




眠りに落ちる直前に見た窓の外では

未だに嵐が続いていた

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