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数年に一度の流星群が来るらしい
どうせ家にいてもすることはない
なら、見に行かない手はないだろう
アパートの裏の川沿いの土手にビール片手に腰を据えてみた
流星群はまだらしい
付近には人一人見当たらないが、おそらくもっと見晴らしのいい丘にでも行ったのだろう
あいにくと流星ぐらいに遠出する気は起きない
「ねぇ、おじさん」
誰もいないと思っていたのだから多少は驚いたさ
いきなり背後から声をかけられたんだから
振り返ると、そこにはあどけなさの残る少年が立ってこちらを見下ろしていた
―――なんだ、坊主
「おじさんはどんなお願い事をするの?」
『流れ星が消える前に願い事を言うと、願いが叶うらしいよ』
昔、そんなことをクラスの女子が言っていたっけか
子供の頃ならいざ知らず、流れ星が願い事を叶えてくれるなんて信じられるほど俺は若くない
でも...そうだな。ここで子供の夢を壊すほど俺は人格破綻者じゃない
―――そういう坊主は願い事があるのか?
「あるよ」
―――なんだ?言ってみろ
「みんなをしあわせに出来るような大人になれますように」
―――皆ってのは家族か?
「ううん。みんな」
―――クラスの友達か?
「もっとみんな」
このガキ...まさか目に付く人間をかたっぱしってことか
―――まるで正義の味方だな
「うん。ぼくウルトラマン大好き」
―――クッ、ハハッ、ハハハハハ!!
本来ならば呆れるべきなんだろう。だが、俺は爆笑した。これ以上ないって程爆笑した
「おじさん、ぼくなんか変なこと言った?」
―――ふ、ハハッ。いやいや、すまない。坊主はなんも変なこと言ってないぞ
「でしょ?」
―――あぁ、立派な夢だとも
「じゃ、次、おじさんの番ね。おじさんのお願いごとを言ってよ」
―――俺の願いか?そうだな。坊主の願い事が叶いますように、かな
「何それ?おじさんの願いなのに、なんでぼくのことなの?」
―――坊主は皆を幸せにするんだろう?ならよ、ついでに俺も幸せになれるかもしれないじゃないか
「う~ん、そうだけど」
―――まぁ、そういうこった。頼んだぜ、坊主
「でも...」
―――ほらほら、余所見してる暇があるのか?始まったみたいだぞ
そう告げてやると、少年は空を見上げる
空には幾千の星が飛び交っていた
俺は空を尻目に少年の横顔を覗いた
目を閉じながら、一心に願い事を唱えているのだろう
子供ってのは呆れるほど純粋で、大人になるにつれその純粋さは失われる
本来なら侮蔑すべきなのかもしれない
だけど、今回だけはこの少年に敬意を払ってやろう
―――この坊主の願いが叶いますように
そう、静かに心の中で唱えた
―――あ、ついでに俺が結婚できますように
「おじさん、今、ふじゅんなこと考えなかった?」
―――気のせいだ
驚いた。本当にそういう曲あるのか。俺はSTARDUST TRAINをもじっただけだったんだが
誰かの願いを叶えるってことは、他の誰かの願いを無視するってこと
相反するものなら矛盾するわけだし
起こらないから奇跡っていうんだよ。まぁ、あとは自力でなんとかしろってことだよね
そっちはわからん