★ 紫煙の漂う珈琲館

ジリジリと熱を発するオーブンを背に，カップを磨く

店内に人は少ない


スローテンポの音楽とともに流れるは紫煙

音が

空気が

時が

すべてがゆったりと流れていく


磨いたカップを棚に入れ，椅子に腰かけて腕時計に目をやる

さて，こんなことをするのは何度目だったか

約束もしていないのに，私は何を待っているのか



彼女は，来てくれるだろうか


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ねぇ，知ってるかい？

君は君が思ってるよりもずっと素敵な人

そろそろ，それを認めて欲しいな

世辞に聞こえるかな？

生憎と，俺は思ってもいないことを口に出来るほど器用な人間じゃないよ



君はいつも自分の在り方に悩んでいて

少しでもマシな自分になろうと足掻いてる

誰がそれを無様と笑えるというんだ



疲れた時はここに来るといい

腕によりをかけて珈琲を淹れよう

あぁ，レモネードのほうが良かったかな？

それとも紅茶？

知ってるんだ

君が紅茶党だってこと

俺にとってはね，無理に珈琲を頼むよりも

君が美味しいと思うものを頼んで欲しい

君がうれしそうな顔をしていれば

それだけで俺はいいんだから


//

カウンターの裏にはそっと忍ばせた真紅のゼラニウム

やはり彼女には赤い花が似合う

燃え上がる情熱の赤が


背を向けたオーブンが止まった頃

カランカランとベルが鳴り，

ドアの向こうには肩に雪を乗せた君がいた



―――今日はもう店仕舞いだ，入ってくれ

今日は貴女のお誕生日

ということで，貴女のイメージするマスターにどれだけ近付けたかはわかりませんが，自分なりにやってみました

即興なのでちょっと荒い部分がありますが，すいません


お誕生日，おめでとうございます

感謝と愛と祝福を