★ Full Moon

夕方に外に出て、喫煙所で煙草を吸っていた

先客は研究室の先輩

「月が、綺麗ですね」

東の山から全景を晒したばかりのまんまるの月を見て、思わずそう呟いた

「ん？あぁ・・・」

この先輩はいつも元気が無い

自分に自信がない

未来に希望を持てない

そんな人だからこそ、風景で癒されればいいな、と思ったが、大して効果は無かったようだ


背後の扉が開いて、学科長が来た

「おぉ、見てみろ。今日は月が綺麗だ」

開口一番にそれ

けど、ちょっと嬉しかった

誰かと何かを共有できるというのは存外気分のいいものだ

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こんな月の夜は

すべてを投げ出して君に会いに行きたい

こんな月の夜に

僕の隣に君がいてくれたら

僕はいつもより饒舌になるかもしれないね


遠く北の大地にて、

君ヲ想フ

★ ロネ

物事の美醜は人それぞれ

それを醜く感じるも、美しく感じるのも自由だ

ならば選べ

肥溜めのような世界で生きるか

光に包まれた世界で生きるかを



綺麗事を並べ続けても、ギリギリの状況ではそんなものはクソの役にも立たない

あぁ、そんなことはわかっている

ならば生き抜いてみせるさ

己が生涯を以って証明してみせよう

己が死を以って証明してみせよう

幾千の呪言を幾千の祝言によって打倒してやろう


さぁ、行こうじゃないか

Welcome to the New World!

★ Life is like a Melody

風を歌い

雪を唄い

人を謡い

世界を詠い

愛を謳った


人が奏で

世界が奏で

俺が奏でる


嬉しい音

悲しい音

楽しい音

怒った音

みんな違う音

だからこれは音楽会

一人一音の、音楽会


世界は音で溢れている



はるか時の彼方

まだ見ぬ　遠き場所で

唄い続けられる

同じ人類の　うた

★ 翼

夜空に翼広げ

大地を見下ろし滑空


眼下に流れる街の灯は赤い線

圧倒的な存在感の月に見下ろされる

狭間に揺れ動くは翼を持つもの


大空には夢がある

重力に縛られた者達の夢がある

広い広い大空を

俺たちは飛び続ける

重力に縛られたものたちよ

そこで大口開けて見ているがいい

ここはお前達の届かぬ場所

お前達が箱舟を用いてしか来れない

俺たちの聖域



翼が夜を切り裂く

弾丸だ

俺たちは弾丸なのだ

夜の色を切り裂いて

俺たちは進み続ける

これが自由だ

俺たちのみに許された自由なのだ



さぁ、飛ぼう、同氏達よ

大空に羽広げ、羽ばたこう

鎖など引き千切ってしまえ

我々は重力という鎖から解放されているのだから



翼が夜を切り裂いて

暁に向かって飛び去る

翼を持つものは

飛び続けなければならない

いつか、重力という鎖に囚われたとき

空を飛んでいた記憶を

その翼に託すために

★ 点と点を結び軌跡と為す

縦にy軸

横にx軸

原点から始まる点の集合体

あるいは切片があるかもしれない

始まりが0とは限らないから


総ての点と点を結んでみよう

そうして第一象限に生まれる軌跡

カクカクとして

歪な

線と線の集まり


これじゃあ数式で表せない

だから、

近似値を取って歪なそれを直線にした

値が上回りすぎた点を下に下げ

値が下回りすぎた点を上に上げた

ほら、これで綺麗だ



本当に？

本当にそれは綺麗なの？

直線は確かに綺麗かもしれないよ

でも、これじゃあ点の美しさが見えないよ

「これが全体像を把握するということだ」

そうかもね

でも、僕は煌く一個一個の点が好きだったんだ

それが基準値を下回ろうとも

個の美しさが好きだったんだ